歴史と背景
津軽地方の代表的な郷土料理「けの汁」にはいくつかの由来があります。津軽の方言で「粥(かゆ)」を「け」と呼ぶことから「けの汁」と呼ばれる説や、昔の貴重な米を節約するために刻んだ具材を米に見立てて食べたという説があります。この料理は約400年前の津軽藩祖・為信の時代から受け継がれているとも言われています。
けの汁は元々小正月の特別な料理で、正月に家族の世話や来客対応に追われた嫁が里帰りする際、男性たちのために用意されたものでした。栄養豊富な保存食として、凍った汁を崩して温め直し、数日にわたって食べられました。
食べ方
けの汁は小正月に一年の無病息災を願っていただく精進料理で、「津軽の七草がゆ」とも呼ばれます。家庭では女性が小正月にくつろぐために事前に用意し、正月16日の朝には家族で供えて拝んだ後、一緒に食べます。大鍋で大量に作り、数日間にわたって温め直して食べる習慣があります。家庭ごとに食材や作り方が異なり、「おふくろの味」として親しまれ、地元では女性が集まると「けの汁談義」が始まるほどです。
料理の準備は、根菜や山菜、きのこなどを細かく刻むところから始まります。昔は木桶や馬の飼料桶にたっぷりと刻んでいました。大鍋にはイワシの焼き干しと焼き昆布を入れ、材料と水を加えて煮上げます。また、大豆をすりつぶした「ずんだ」も入れるのが特徴です。保存が利くため、温め直すほど具材のエキスが染み込み、味わいが深まります。大鍋から小鍋に分け、数日かけて温め直して食べるのが一般的です。