歴史と背景
津軽湾周辺は昔からホタテの産地として有名で、江戸時代から「貝焼き味噌」という料理が食べられていました。当時は海底を探ると5から10年かけて成長した天然の大きなホタテが取れ、その大きな貝殻を鍋代わりにして、イワシやサバの切り身と自家製の味噌をのせて焼いた素朴な漁師料理でした。
後に卵が手に入るようになり、溶き卵をかけて全体を閉じるようにするようになりました。当時は病人や妊産婦など特別な場合にしか食べられない贅沢な料理でした。
津軽出身の太宰治も、自著『津軽』の中で「貝焼き味噌」への憧れを語っています。現在は養殖ホタテが主流となり、漁民の生活は安定しましたが、「貝焼き味噌」に適した大きな貝殻が手に入りにくくなりました。そのため、漁師の家庭では大きな天然ホタテの貝殻を大切に保管し、専用の鍋として使用しています。地元ではこれを「かやぎみそ」と呼ぶこともあります。
食べ方
ホタテの貝殻を鍋代わりにし、出汁に味噌を溶き入れ、煮立ったら具材を加えて最後に卵でとじて食べます。津軽地方ではシンプルに卵と味噌で食べますが、下北地方では「味噌貝焼き」として、ふのりや海苔、ウニ、イカ、ホタテなど海の幸がたっぷり入ったバージョンもあります。
熱々の貝から立ち上る海の香りと、煮立った卵や香ばしい味噌の風味が広がります。地酒との相性も良いですが、家庭では熱々のご飯の上にのせて食べることもあります。