むつ市大湊地区は、明治35年に旧海軍大湊水雷団が開庁して以来、北方防衛の要港として発展してきた歴史あるまちです。終戦後は海上自衛隊大湊地方隊が置かれ、現在も日本の北を守る重要な拠点としてその役割を担っています。明治・大正期の海軍施設が今なお点在し、当時の面影を色濃く残していることから、この一帯は「北の防人大湊」として整備されています。
エリアの中心に位置する水源池公園内には、旧大湊水源地水道施設が残されています。これは明治35年に建設された石造の近代水道施設で、東北地方で最初期のものとして高い歴史的価値を持ち、国の重要文化財にも指定されています。特に重力アーチ式の「沈澄池堰堤」は、現存例が少なく、土木遺産としても見どころです。
また、北洋館は大正5年に旧海軍士官の社交場として建てられ、現在は資料館として海軍時代から現代までの貴重な資料を展示しています。さらに、大正4年築の士官官舎を活用した弐番館は、市の有形文化財として保存され、文化交流の場として親しまれています。
安渡館(あんどかん)は、旧海軍大湊要港部庁舎をイメージして平成27年にオープンした観光交流センターです。館内には観光案内のほか、海軍・海上自衛隊関連グッズの売店、地元食材を使ったグルメを味わえる食堂、交流スペースなどが整っています。ボランティアガイドによる散策案内の拠点にもなっており、初めて訪れる方にもおすすめです。
隣接する展望台「海望館」からは、海抜55メートルの高さから陸奥湾を一望でき、停泊する海上自衛隊の艦艇や、芦崎の美しい砂嘴、晴れた日には八甲田山系から尻屋崎方面まで見渡すことができます。夜間のライトアップも魅力のひとつです。
観光とあわせて楽しみたいのが、大湊海軍コロッケと大湊海自カレーです。海軍コロッケは、明治期の海軍レシピをもとに牛脂を使って再現された伝統の味で、大湊発祥ともいわれています。一方、海自カレーは各部隊ごとに異なる秘伝のレシピがあり、金曜日の定番食として受け継がれてきた文化を味覚で体験できます。
歴史、景観、グルメが一体となった「北の防人大湊」は、むつ市を訪れるならぜひ足を運びたい、奥深い魅力に満ちた観光エリアです。