秦の始皇帝が立てた宮殿”阿房宮”の名を冠する食用菊。黄色の大輪種・八重咲きで、抜群の香りと甘みを持ち、シャキシャキとした食感が楽しめる舌触りがよい食材。江戸時代に豪商七崎屋半兵衛によって京都から八戸に持ち込まれた。青森県の南部町周辺では江戸時代から「阿房宮」を食用として栽培してきた。関東以西では刺身と一緒に盛られる「つま菊」が一般的であるが、東北地方では大ぶりな花びらを野菜の一種として食べる習慣があり、料理のバリエーションも豊か。「阿房宮」の収穫時期はその満開時期である10月下旬~11月に行われるが、他の食用菊と違い収穫されたあと、その大半を保存が効く干し菊に加工するという風習がある。これは「阿房宮」のあざやかな色と、かぐわかしい香りを一年中楽しみたいという先人の願いと工夫が風習となって残っているようだ。解毒作があることや、古代より中国で延命長寿の花として菊茶・菊花酒、漢方薬として飲まれており、ビタミン・ミネラルが豊富で健康への効果も期待でき、健康食材としても注目を浴びている。