田代平湿原の成り立ちと特徴
田代平湿原は、約200万年前の八甲田山の火山活動によって形成されたカルデラ湖が、長い年月をかけて湿性遷移を続け、湿原へと姿を変えたものです。八甲田山系の湿原の中でも最大規模を誇り、その学術的価値の高さから青森市の天然記念物にも指定されています。
この湿原では、枯れた植物が冷涼な気候のため完全に分解されず、有機物として積み重なり、最大約5メートルにも及ぶ泥炭層を形成しています。これほど厚い泥炭が堆積するには何万年もの時間が必要であり、田代平湿原は八甲田山の中でも特に古い歴史を持つ湿原として知られています。
湿原を彩る植物と季節の魅力
比較的標高が低い田代平湿原では、他の八甲田の湿原とは異なる植生が見られます。初夏の6月中旬には、白い穂を揺らすワタスゲが一斉に咲き、湿原一面がまるで白い海のような幻想的な景色に包まれます。同じ頃には、レンゲツツジ、ヒメシャクナゲ、トキソウなども可憐な花を咲かせます。
6月下旬から7月にかけてはニッコウキスゲやキンコウカ、スイレンが見頃を迎え、8月下旬にはウメバチソウやサワギキョウが秋の訪れを告げます。季節ごとに主役となる植物が移り変わるため、何度訪れても新たな発見があります。
木道散策で楽しむ湿原ハイキング
湿原内にはよく整備された木道が設けられており、足元を気にせず安心して散策できます。一周およそ1時間のコースは、気軽なハイキングや自然観察に最適です。八甲田温泉や旧田代平小学校付近からアクセスでき、途中には青い鳥居の立つ龍神沼など、信仰と自然が調和した風景も楽しめます。
澄んだ水が流れる神秘のグダリ沼
グダリ沼は、田代高原の東、田代平放牧場の近くに位置する湧水池です。「沼」と名付けられていますが、実際には日量約20万トンもの清冽な湧水が絶えず流れ、全国でも屈指の透明度を誇る清流が広がっています。
水中にはバイカモなどの水草が自生し、せせらぎにはイワナなどの魚も生息しています。また、切断しても再生することで知られるプラナリアが5種類も確認されており、極めて貴重な自然環境であることがうかがえます。
静かな散策路とアクセス情報
グダリ沼周辺には、「ブナ林散策道」や「つつじの小径」といった約1.5kmの穏やかな散策路が整備されています。人通りが比較的少なく、静かな森の中を歩きながら、清らかな水音と季節の風景を心ゆくまで楽しめる穴場スポットです。
田代高原から徒歩で約20分、車の場合は県道40号線を十和田方面へ進み、田代牧場入口付近に駐車後、徒歩約5分で到着します。
八甲田ドライブとあわせて楽しむ
八甲田山北麓を走る県道40号線、南麓の国道103号線は、湿原や湖沼を巡る爽快なドライブルートです。途中には茶屋や温泉も点在し、自然散策とともに地元の味覚や温泉を楽しむことができます。なお、散策路は11月から5月まで冬季閉鎖となるため、訪問時期にはご注意ください。
田代平湿原とグダリ沼は、八甲田の雄大な自然と静寂を体感できる、心に残る観光地です。