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谷地温泉

(やち おんせん)

谷地温泉は、青森県十和田市に位置し、八甲田山系の大自然に抱かれた秘湯として知られています。「日本三大秘湯」のひとつに数えられるこの温泉は、約400年の歴史を誇り、今もなお多くの湯治客や旅行者を魅了し続けています。標高800メートルという山中にたたずむ一軒宿の温泉は、木造建築の趣きある佇まいと、足元から湧き出る源泉を楽しめる浴槽が特徴で、訪れる人々に心身の癒やしを与えてくれます。

歴史と伝承

谷地温泉の開湯は約400年前に遡るといわれています。『十和田村史』によれば、深持村の与治右衛門という人物が、山中でシナの木の皮を剥いでいた際に温泉を発見したと伝えられています。その後、彼の一族が代々温泉を守り続け、与右衛門、与之助、岩五郎、辰之介と世代を重ねながら温泉経営を引き継いでいきました。

天保年間(1830~1840年)の飢饉により一時は荒廃しましたが、法量村の泉舘与左衛門が経営を引き受け、再び温泉は活気を取り戻しました。さらに安政の頃の絵図や文久元年(1861年)の記録には「南部萢ノ湯」として温泉小屋や薬師堂の存在が描かれており、当時から多くの人々が利用していたことがわかります。

明治時代の谷地温泉

明治時代には『新撰陸奥国誌』に温泉の様子が詳しく記録されています。そこには「上の湯」「下の湯」と呼ばれる二つの浴槽があり、それぞれ効能が異なることが記されています。上の湯は熱めで白濁した湯が特徴で、胸や腹の痛みに効くとされました。一方、下の湯はややぬるめで、眼病や皮膚病に良いと伝えられています。

また、薬師の湯と称される特別な湯も存在し、これは山神が入るものとされ、人々の入浴は禁じられていました。当時は農閑期に農民たちが湯守を務め、繁忙期には一日に150人以上もの入浴者があったと記録されています。小屋も複数建てられ、五戸や八戸の裕福な人々も訪れ、湯治を楽しんだ様子が伺えます。

秘湯の魅力

谷地温泉が「日本三大秘湯」のひとつと呼ばれる所以は、その立地と雰囲気にあります。標高800メートルの山中にひっそりと佇む温泉は、ブナ林や湿原に囲まれ、四季折々の美しい自然を感じながら湯に浸かることができます。都会の喧騒から離れ、静寂に包まれた時間を過ごすことができるのは、この温泉ならではの魅力です。

泉質と効能

谷地温泉の泉質は単純硫化水素泉で、源泉温度は約50度。やや硫黄の香りが漂い、身体を芯から温める力があります。効能としては、神経痛、リューマチ、婦人病、皮膚病などに効果があるとされ、湯治場として古くから親しまれてきました。

浴槽の特徴

浴場はヒバ造りで、足元から源泉が湧き出す「足元湧出式」が採用されています。お湯は空気に触れずにそのまま湧き出しているため、フレッシュな源泉をそのまま浴びることができます。やさしく包み込むような湯の感触は、多くの人々に癒しを与えてきました。

温泉宿の魅力

谷地温泉は一軒宿であり、木造の温かみある建物が旅人を迎えてくれます。宿泊者は旬の地元食材を使った料理を楽しむことができ、温泉と共に青森の自然の恵みを堪能できます。特に山菜や川魚を中心とした料理は、ここでしか味わえない素朴な美味しさがあります。

周辺の自然と観光スポット

温泉のすぐ近くには谷地湿原が広がっており、四季折々の植物や野鳥観察を楽しむことができます。春から夏にかけては可憐な高山植物が咲き誇り、秋には紅葉が湿原を彩ります。自然散策と温泉を組み合わせることで、より深い癒しを体験することができます。

周辺の観光スポット

いずれも個性豊かな温泉や景勝地であり、谷地温泉と合わせて巡ることで八甲田山系の魅力を存分に楽しむことができます。

アクセス

谷地温泉へのアクセスは以下の通りです。

まとめ

谷地温泉は、約400年の歴史と伝承を持つ青森県の秘湯であり、「日本三大秘湯」の名にふさわしい温泉です。自然に囲まれた静かな環境、足元から湧き出す源泉、古くから受け継がれてきた湯治文化、そして地元食材を活かした料理。訪れる人は、まるで時が止まったかのようなひとときを過ごすことができるでしょう。

都会の喧騒を離れ、自然と歴史が織りなす癒しの空間で心身をリフレッシュする旅。谷地温泉は、そんな特別な体験を求める方におすすめの温泉地です。

Information

名称
谷地温泉
(やち おんせん)

十和田・奥入瀬

青森県