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蔦温泉

(つた おんせん)

蔦温泉は、青森県十和田市に位置し、平安時代から千年近い歴史を誇る温泉地です。1147年にはすでに湯治小屋の存在が文献に記録されており、古くから人々の癒しの場として親しまれてきました。ブナの森に囲まれた自然豊かな環境の中で、木造建築の趣ある宿泊施設や源泉湧き流しの湯船を楽しむことができ、訪れる人に深い安らぎを与えてくれる名湯です。

温泉の特徴と泉質

蔦温泉の最大の特徴は、日本でも珍しい「源泉湧き流し」の方式です。浴槽の底板から無色透明の源泉がぷくぷくと湧き出し、空気に触れることなく浴槽を満たします。これは「生の源泉」とも呼ばれ、全国でも数少ない貴重な入浴体験ができます。足元から上がってくる湯玉が肌に触れる感覚は、この地ならではのものです。

泉質

ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩-塩化物泉

効能

神経痛、リューマチ、機能障害などに効果があるとされています。ただし、効能はすべての人に保証されるものではありません。

温泉宿と施設

蔦温泉には一軒宿である「蔦温泉旅館」があり、大正時代に建てられた木造本館が今も大切に利用されています。宿の自慢は、源泉が足元から湧く「久安の湯」と、文豪・井上靖によって名付けられた「泉響の湯」です。

「久安の湯」は男女入替制の浴場で、古びた雰囲気と素朴な佇まいが魅力です。対して「泉響の湯」は男女別に用意されており、広々とした空間の中でゆったりと入浴を楽しめます。さらに、現地予約制の貸切風呂もあるため、プライベートな時間を大切にしたい方にもおすすめです。

宿の魅力

宿には自然を望む客室があり、四季折々のブナ林の景色を楽しめます。また、旬の食材を活かした会席料理を提供するレストランや、広々とした庭園も整えられています。宿に滞在しながら静かな時間を過ごすのも良し、周囲の自然を散策するのも良し、訪れる人の過ごし方に合わせた楽しみ方が可能です。

自然と散策

宿の周囲には蔦七沼(つたななぬま)と呼ばれる湖沼群が点在しており、散策路として整備されています。「蔦沼めぐり自然研究路」や「野鳥の森めぐり」のコースでは、野鳥のさえずりや湖面に映るブナ林の美しい風景を楽しむことができます。秋には鮮やかな紅葉、春には新緑、夏は深緑、冬は雪景色と、四季折々の自然美が訪れる人を魅了します。

また、車で約20分の場所には奥入瀬渓流があり、流れ落ちる滝や渓谷の美しさを散策することができます。さらに車で約40分の場所には八甲田ロープウェイもあり、山頂からは壮大な景色を望むことができます。

歴史と文化的背景

蔦温泉の歴史は非常に古く、発見は1174年と伝えられています。明治時代の紀行作家・大町桂月はこの温泉をこよなく愛し、奥入瀬渓流の美しさを全国に紹介しました。晩年には本籍をこの地に移し、終の棲家としたほどの愛着を持ち、現在も温泉の敷地内には彼の墓が残されています。

また、戦後を代表するプロレスラーであり参議院議員も務めたアントニオ猪木も蔦温泉を愛した人物の一人です。夫人とともにしばしば訪れ、死後はこの地で眠ることを望んで墓を建立しました。現在も彼の遺志が尊重され、訪れる人々がその存在を偲ぶ場となっています。

アクセス

車でのアクセス

東北自動車道・十和田ICから約90分で到着できます。

公共交通機関でのアクセス

東北新幹線・八戸駅からJRバス東北「十和田東線」で約90分、「焼山」下車後、十和田北線に乗り換え約20分で「蔦温泉」へ。
またはJR/青い森鉄道・青森駅からJRバス東北「十和田北線」で約1時間30分のアクセスも可能です。

周辺の温泉地

文化的な逸話

蔦温泉は音楽の世界でも知られています。シンガーソングライター吉田拓郎の初期のヒット曲『旅の宿』の舞台とされており、文学や芸術の分野でも度々取り上げられています。

まとめ

蔦温泉は、千年近い歴史を持ち、自然に抱かれた環境で特別な癒しを与えてくれる温泉地です。源泉湧き流しという珍しい入浴体験や、歴史に名を刻んだ人物たちとのゆかり、四季折々の自然美が織りなす景観が訪れる人を魅了します。奥入瀬渓流や八甲田山系への観光拠点としても最適であり、心身をゆったりと癒す旅を楽しめることでしょう。十和田の自然と歴史に触れながら、静かなひとときを過ごすにはまさに理想の場所といえます。

Information

名称
蔦温泉
(つた おんせん)

十和田・奥入瀬

青森県