湖の規模と特徴
この湖は、貯水量およそ1,425万6,000立方メートルという膨大な水を蓄え、春の増水期には水深約7メートル、満水面積は281ヘクタールに達します。特筆すべきは堤長で、延長4.2キロメートルと日本一の長さを誇ります。その雄大な規模は訪れる人を圧倒し、自然と人の営みが調和した美しい風景を作り出しています。
ため池百選への選定
2010年(平成22年)には、農林水産省が選定する「ため池百選」に選ばれ、その歴史的価値と景観美が改めて評価されました。農業のために造られた池が、今日では地域の象徴的な観光資源となっていることは、大きな誇りといえるでしょう。
津軽富士見湖の歴史
廻堰大溜池の築造は1660年(万治3年)にさかのぼります。津軽藩主・津軽信政の命により、西津軽一帯の新田開発に必要な灌漑用水源として造られました。以来、地域の農業と暮らしを支えてきました。
その後、1943年(昭和18年)から1969年(昭和44年)にかけて、国営西津軽一期農業水利事業の一環としてかさ上げや改修工事が行われ、さらに規模を拡大。1989年(平成元年)から1994年(平成6年)にかけては、県営つがる富士見地区農業水利施設高度利用事業により「鶴の舞橋」などが整備され、観光資源としての魅力が高められました。そして1994年7月、待望の鶴の舞橋が開通し、現在の観光地としての姿が形づくられました。
鶴の舞橋とその美しさ
湖の象徴ともいえるのが、全長300メートルの木造三連太鼓橋「鶴の舞橋」です。樹齢150年以上の青森ヒバを使用した木造アーチ橋で、日本一長い木造人道橋として知られています。その優美な曲線は「鶴が羽を広げて舞う姿」を表現しており、橋の中間には高床式の休憩所が設けられています。これを鶴の胴体、両側のアーチを羽に見立てることで、まるで湖上に鶴が羽ばたいているかのような光景を楽しむことができます。
デザインのこだわり
橋の高欄には鶴の絵を描いた銅板が装飾されており、細部に至るまで優雅さを追求しています。さらに設置された110基の照明は、蛍が舞うような光景を演出し、夜には幻想的な姿を湖面に映し出します。昼間は自然と調和した優美な姿を、夜は幻想的な灯りに包まれたロマンチックな光景を見せてくれるのです。
湖畔の自然と周辺施設
津軽富士見湖の周辺は鳥獣保護区に指定され、白鳥やガン、カモといった渡り鳥が飛来する越冬地となっています。かつてはタンチョウヅルも訪れたとされ、現在では丹頂鶴自然公園でその優雅な姿を間近に見ることができます。また、湖畔には津軽富士見温泉もあり、旅の疲れを癒やしながら景観を楽しむことができます。
観光イベント
毎年夏に行われるつるた祭りでは、全国から釣り愛好者が集まる「全国へら鮒釣り大会」が開催され、大変な賑わいを見せます。地元の人々と観光客が一体となって楽しむイベントは、津軽富士見湖ならではの魅力のひとつといえるでしょう。
鶴の舞橋 観光施設「ここにもあるじゃ」
鶴の舞橋観光施設「ここにもあるじゃ」は、青森県鶴田町の象徴である「鶴の舞橋」がかかる富士見湖パーク内に位置する観光施設です。「道の駅つるた 鶴の里あるじゃ」の姉妹店として誕生し、町の特産品やお土産を数多く取り揃えています。地元の農産物や加工品、人気のスイーツなど、鶴田町ならではの味覚を楽しめるのが魅力です。
お土産と軽食が楽しめる施設
施設内には、ゆったりと過ごせるイートインスペースがあり、ご家族やご友人と一緒に軽食や冷たいスイーツを味わうことができます。観光の合間に立ち寄って休憩したり、地元グルメを気軽に楽しむ場所としても人気です。「ここにもあるじゃ」は、鶴田町の温かなもてなしと地域の魅力を感じられる、観光客にも地元の人にも愛される憩いの場です。
富士見湖パーク
鶴の舞橋を訪れる際には、併設された富士見湖パークでの散策やピクニックもおすすめです。湖畔を歩けば、岩木山と橋が織りなす絶景をさまざまな角度から楽しむことができます。
アクセス
津軽富士見湖へは、青森県道200号米山菖蒲川線沿いに位置しています。かつては弘南バス「五所川原~鶴田線(廻堰経由)」が運行されていましたが、2018年9月に廃止されました。そのため現在は陸奥鶴田駅や五所川原駅からタクシーの利用が便利です。車でのアクセスも良好で、観光ルートの一部として訪れる方が多くなっています。
まとめ
津軽富士見湖(廻堰大溜池)は、青森県を代表する人造湖であり、農業と観光の両面で地域にとって欠かせない存在です。岩木山を背景にした雄大な景観、日本一の木造人道橋「鶴の舞橋」、そして豊かな自然や温泉、イベントと、訪れる人を楽しませる魅力にあふれています。四季折々の風景を楽しみながら、津軽の自然と歴史に触れる旅を計画してみてはいかがでしょうか。