湖の概要と自然環境
十三湖は津軽国定公園内に位置し、五所川原市(旧市浦村)、中泊町(旧中里町)、つがる市(旧車力村)にまたがっています。湖の周囲はおよそ30キロメートル、水深は最大でも3メートルほどと浅く、岩木川が南方から流入して日本海へと注いでいます。しかし、砂州によって塞き止められたことにより、湖は汽水湖となりました。そのため、独特でどこか荒涼とした美しい風景が広がっています。
しじみの名産地として
十三湖は、島根県の宍道湖や青森県の小川原湖と並ぶ日本有数のしじみ産地として知られています。特に「ヤマトシジミ」が豊富に採れることで有名で、十三漁業協同組合や車力漁業協同組合が資源を守るために漁獲制限や禁漁区の設定などを行っています。しじみは専用の道具「ジョレン」を船で引っ張って採取されます。
しじみの歴史と料理
十三湖でのしじみ漁は明治時代にはすでに始まっており、現在では「十三湖産大和しじみ」として地理的表示保護制度(GI)にも登録されています。湖周辺の飲食店ではしじみを使った多彩な料理が提供されており、しじみラーメンやしじみカレー、しじみ丼、さらにはしじみ寿司など、地元ならではの味を楽しむことができます。
ヤマトシジミの魅力
十三湖産のシジミは身が厚く旨みが濃く、オルニチンが豊富で肝臓をいたわる効果が期待できるため、健康食品としても注目されています。
しじみ採り体験
観光客向けに、湖北側の「中の島ブリッジパーク」では毎年4月下旬から10月上旬にかけてしじみ採り体験が可能です。参加費は一袋300円で、採取は素手のみと決められています。ジョレンなどの道具の使用は禁止されており、決められた区域以外での採取は法律で罰せられるため、事前確認が重要です。体験を通じて、自然と共生する漁業文化を学ぶことができます。
歴史的背景 ― 十三湊遺跡
十三湖の西側には、中世における日本海沿岸の交易港として栄えた十三湊遺跡があります。鎌倉時代から室町時代にかけて安倍氏・安藤氏(安東氏)の拠点として栄えましたが、近世以前に衰退しました。1991年以降の発掘調査で港湾施設や町屋跡、寺院跡などが発見され、2005年には国の史跡に指定されています。
主な発掘エリア
- 港湾施設地区:船着場や桟橋跡とみられる遺構が発見されています。
- 町屋・武家屋敷地区:多くの遺物が出土し、領主館や家臣団の屋敷があったと考えられています。
- 檀林寺跡地区:中世の寺院跡が確認されています。
十三湖と白鳥
十三湖はオオハクチョウやコハクチョウの渡来地としても知られており、「十三湖のハクチョウ」として青森県の天然記念物に指定されています。冬の湖畔では、優雅に羽ばたく白鳥の姿を見ることができ、多くの観光客や写真愛好家が訪れます。
神社・仏閣・城跡
十三湖周辺には、かつて十三千坊と呼ばれたほど多くの神社仏閣が存在していました。その中でも「神明宮」や「湊明神宮」、「山王坊日吉神社」などは今も地域に残り、往時の繁栄を伝えています。また、湖の北岸には安東氏の居城とされる福島城跡や古代の高地性集落とされる唐川城跡もあり、歴史探訪の地としても見どころが豊富です。
祭りと文化
十三地区では、毎年8月14日から16日にかけて十三の砂山まつりが開催されます。この祭りは江戸時代から続く伝統行事で、盆踊りや大漁祈願祭などが行われます。地域の人々の絆を感じられる、心温まる祭りです。
中の島ブリッジパーク
十三湖に浮かぶ小島を利用して整備された公園が中の島ブリッジパークです。遊歩道橋で湖岸とつながっており、島内には宿泊施設や資料館、キャンプ場、レストラン、アスレチック場などが整備されています。湖の歴史や文化に触れられるとともに、しじみ拾い体験も楽しめるため、家族連れにも人気です。
アクセス
十三湖へのアクセスは、五所川原駅から弘南バスで「中の島公園入口」下車、または津軽鉄道津軽中里駅からバスを乗り継ぐ方法があります。自動車の場合、東北自動車道浪岡ICから津軽自動車道・国道339号を経由して約60分です。
道の駅十三湖高原「トーサムグリーンパーク」
道の駅十三湖高原 トーサムグリーンパークは、十三湖を一望できる高台に位置し、遠くには雄大な岩木山が望める絶好のロケーションが魅力の観光スポットです。自然豊かな環境の中で、名産のしじみ料理や地元産品を楽しむことができます。
地元グルメを味わえるレストラン
施設内のレストラン「わらび」では、十三湖名産のヤマトシジミをたっぷり使った「しじみラーメン」や「十三湖しじみカレー」、さらには「しじみの汁焼きそば」など、多彩なメニューが揃っています。湖と岩木山、市浦牛の放牧風景を眺めながらの食事は格別です。
特産品が揃う物産コーナー
物産コーナーには、採れたての活しじみをはじめ、しじみエキスドリンク、日本海の綿石、青森ヒバを使った木工品や石鹸など、地元ならではの品が並びます。近隣市町村の特産品も取りそろえられており、お土産選びにも最適です。
人気メニュー「十三湖しじみラーメン」
十三湖産ヤマトシジミを使用したしじみラーメンは、透き通ったスープにアミノ酸の旨みが凝縮した逸品です。あっさりとしながら深い味わいで、疲労回復にも良いと評判です。定食や丼にはしじみ汁を提供する店も多く、訪れる人に親しまれています。
まとめ
十三湖は、しじみの名産地としての魅力だけでなく、中世の十三湊遺跡や白鳥の渡来地としても高い価値を持つ観光地です。自然、歴史、食文化、祭りなど多彩な魅力を備えており、訪れる人々に忘れられない体験を与えてくれることでしょう。