自然が創り出した湖の物語
十二湖の湖沼群は、1704年の能代地震によって形成されたと伝えられています。地震による地盤の崩壊や陥没によって生まれた大小さまざまな湖が、現在の「十二湖」を形づくっています。実際には33の湖沼が存在しますが、標高694メートルの大崩(おおくずれ)という山から眺めると12の湖が見えることから、「十二湖」と呼ばれるようになりました。
原生林に包まれた自然の聖地
十二湖周辺には、人の手がほとんど入っていない原生的なブナ天然林が広がっています。この地域には540種類を超える植物が自生し、ニホンカモシカやツキノワグマなど、多くの野生動物も暮らしています。まさに「太古の自然」が今も息づく神秘の森といえるでしょう。
自然の浄化装置 ― 美しい水をたたえる湖沼
十二湖は、ブナ林から染み出す水が集まってできた天然の水桶やダムのような構造をしています。そのため水質が非常に良く、自然の浄化機能が保たれた清らかな水が各所で湧き出しています。中でも「沸壺(わきつぼ)の池」は、青森県の名水にも選ばれており、美しい青色の湧水が観光客の目を楽しませています。
文人・大町桂月が称えた「天下の奇観」
大正11年(1922年)、文人の大町桂月が十二湖を訪れ、「日暮し山の眺望、湖畔群の幽闇、紅葉の残照など十二湖は天下の奇観である」と絶賛しました。この言葉が広まり、十二湖の名は全国に知られるようになりました。それ以来、文学者や写真家、自然愛好家たちが数多く訪れる地として人気を集めています。
青池
十二湖の中でも特に有名なのが、「青池(あおいけ)」です。表面積975平方メートル、水深9メートルの小さな池ながら、そのコバルトブルーの湖面は訪れる人々を魅了します。まるでインクを垂らしたように澄み切った青は、太陽の光が差し込む角度や時間帯によって微妙に変化し、見る者に幻想的な印象を与えます。池底には朽ちたブナの木々が沈み、その姿まではっきりと見えるほどの透明度を誇ります。
一年を通じて凍らない不思議な湖
青池の水温は年間を通じて約9℃と一定で、厳しい青森の冬でも凍ることがありません。そのため、冬季でも青く澄んだ水面を楽しむことができ、「青森のパワースポット」としても多くの人々に親しまれています。
沸壺の池
青池からさらに歩くこと約15分のところにあるのが「沸壺の池」。絶えず湧き水が流れ込み澄んだ池には、木製の展望台があり、周囲の木々を映した美しい湖面を見ることができる。
ブナ自然林
十二湖の周辺は散策できるように整備されており、ブナの林や湖畔の樹木は季節ごとの変化に富み、楽しむことができます。
日本キャニオン
十二湖周遊コースで望める白い岩肌。浸食崩壊によって凝灰岩の白い岩肌がむき出しになったダイナミックなU字谷大断崖で、アメリカのグランドキャニオンにヒントを得て命名されました。昔は地元の人から「日暮山」と呼ばれていました。
歩いて楽しむ「十二湖の森」
「十二湖の森」では、湖沼群やブナ林をゆっくりと巡るための4つのセラピーロードが整備されています。体力や時間に合わせて、自然を満喫できるコースが選べます。
- 青池・沸壺の池コース(約2時間30分)
- 金山の池ショートコース(約2時間30分)
- 金山の池・糸畑の池ロングコース(約4時間)
- 王池コース(約2時間30分)
春の新緑、夏の清涼、秋の紅葉、冬の静寂と、季節ごとに表情を変える自然の風景を楽しむことができます。特に秋の紅葉と湖面の青が織りなすコントラストは圧巻で、訪れる人々の心に深く残ります。
まとめ ― 永遠に輝く自然の宝庫
十二湖は、白神山地の雄大な自然と長い時を経て生まれた奇跡の景観が調和する場所です。ブナ林に抱かれた湖沼群は、まさに「太古の自然が今も息づく聖域」。青池をはじめとする神秘の湖たちは、訪れる人々に静かな感動と癒しを与えてくれます。白神山地の豊かな自然とともに、日本が誇る美しい風景を存分に堪能してください。