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亀ヶ岡石器時代遺跡

(かめがおか せっき じだい いせき)

亀ヶ岡石器時代遺跡は、青森県つがる市木造地区に位置する縄文時代晩期(約3,000~2,400年前)の大規模な集落遺跡です。一般には「亀ヶ岡遺跡」とも呼ばれ、特に1887年(明治20年)に出土した有名な遮光器土偶の発見地として広く知られています。この遺跡は1944年(昭和19年)に国の史跡に指定され、さらに2021年(令和3年)には「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一部として世界文化遺産に登録されました。日本の縄文文化を象徴する重要な場所として、国内外から注目を集めています。

遺跡の立地と地理的特徴

亀ヶ岡遺跡は、岩木川流域に広がる標高7~18メートルの丘陵地に位置し、かつての古十三湖(こじゅうさんこ)に面した地域に築かれました。後背地には落葉広葉樹の森が広がり、自然環境と共存する縄文人の暮らしを想像させます。遺跡は大きく分けて二つのエリアに展開しており、東に張り出した台地である亀山地区と、その南北に広がる低湿地帯である沢根地区・近江野沢地区です。これらの地域からは、多種多様な遺物が発見されています。

共同墓地としての役割

台地部分は大規模な共同墓地として利用され、数多くの土坑墓が発見されています。そこからは土器をはじめ、副葬品として玉類などが出土し、祖先を敬い祀る精神文化の存在を伝えています。長期にわたり墓域が形成され続けたことから、縄文時代晩期においても祖先崇拝が継続されていたことが確認されています。

祭祀と出土品

低湿地帯では、祭祀のための「捨て場」が築かれていました。ここからは、漆塗りの土器や漆器、植物製品、土偶、ヒスイ製の玉類などが多数出土しており、縄文人の高度な精神文化を示す貴重な証拠となっています。特に1887年に発見された大型の遮光器土偶は、その独特な大きな目の表現が「遮光器土偶」という名称の由来となり、縄文時代を象徴する遺物として世界的に有名です。

歴史的な発見の歩み

江戸時代から続く遺跡の注目

亀ヶ岡遺跡は江戸時代から既に知られており、津軽藩第2代藩主津軽信枚が1622年に亀ヶ岡城を築こうとした際に土偶や土器が出土しました。その後、一国一城令によって築城は中止されましたが、以後「亀ヶ岡物」と呼ばれる出土品は好事家に珍重され、遠くオランダにまで渡ったとも伝えられています。この時代、無秩序な発掘が行われ、1万点を超える土器が持ち去られたとされます。

近代以降の調査

明治時代に入ると本格的な発掘が行われ、1889年(明治22年)には学術調査が開始されました。1895年の調査では、日本における泥炭化した遺物包含層の存在が初めて明らかとなり、考古学的にも大きな成果を上げました。戦後にはさらに発掘が進み、1980年には台地や谷間の調査により、遮光器土偶をはじめ、漆器や木製品など数多くの遺物が確認されています。

出土品の保存と展示

出土した多くの遺物はつがる市縄文館で展示されており、訪れる人々が縄文文化の豊かさに触れることができます。また、最も著名な遮光器土偶は、1957年に国の重要文化財に指定され、現在は東京国立博物館に収蔵されています。遺跡周辺にはモニュメントも設置され、地域のシンボルとして市民に親しまれています。

亀ヶ岡文化の広がり

亀ヶ岡遺跡から出土した土器や土偶は、洗練された幾何学模様や高度な漆工技術を特徴とし、芸術性の高さで知られています。これらは東北から北海道南部を中心に広まり、やがて「亀ヶ岡文化」と呼ばれる文化圏を形成しました。縄文時代晩期を代表する文化として、その影響は中部や近畿地方にまで及んだと考えられています。

芸術品としての評価

出土品は美術的価値も高く、江戸時代には「亀ヶ岡物」として芸術品扱いされました。中でも漆塗りの土器や土偶は、現代に至るまで国内外の研究者や美術愛好家から高い評価を受けています。縄文人の暮らしの中で芸術的な表現がいかに重要であったかを物語る存在です。

現代に受け継がれる亀ヶ岡遺跡

観光と文化体験

現在、亀ヶ岡遺跡は観光資源としても注目されており、つがる市の文化と歴史を体感できるスポットとなっています。遺跡からほど近い縄文住居展示資料館カルコでは、遮光器土偶のレプリカや出土品を見学でき、縄文時代の暮らしを学ぶことができます。また、JR五能線の木造駅には遮光器土偶を模した巨大モニュメントが設置され、町のシンボルとして親しまれています。

世界文化遺産の一部として

2021年に世界文化遺産へ登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、青森・岩手・秋田・北海道の17遺跡で構成されています。青森県内では三内丸山遺跡、小牧野遺跡、大森勝山遺跡、是川石器時代遺跡、田小屋野貝塚、大平山元遺跡、二ツ森貝塚、そしてこの亀ヶ岡石器時代遺跡が含まれています。世界的にも貴重な縄文文化の証として、多くの人々が訪れる地となっています。

まとめ

亀ヶ岡石器時代遺跡は、縄文時代晩期の人々の精神文化や生活のあり方を今に伝える貴重な文化財です。遮光器土偶をはじめとする優れた出土品は、縄文人の豊かな感性と高度な技術を物語り、今日でも多くの人々に感動を与え続けています。世界文化遺産としての価値を持つこの遺跡は、訪れる人に縄文時代の魅力と、悠久の歴史の重みを伝える大切な場所といえるでしょう。

Information

名称
亀ヶ岡石器時代遺跡
(かめがおか せっき じだい いせき)

津軽

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