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五所川原立佞武多

(ごしょがわら たちねぷた)

五所川原立佞武多は、青森県五所川原市で毎年夏に行われる壮大な祭礼で、青森の「ねぶた祭」、弘前の「ねぷた祭」と並び「青森三大佞武多」のひとつとされています。その起源は民俗行事「眠り流し」にさかのぼり、もともとは眠気や災厄を流し去る意味合いを持ったものでした。五所川原では明治から大正期にかけて、特に巨大なねぷたが作られたことで有名でしたが、電線の設置や二度の大火によって次第に小型化を余儀なくされました。

しかし、1996年(平成8年)、有志の手によって巨大ねぷたが約80年ぶりに復活し、「立佞武多」と名付けられました。1999年(平成11年)には祭り自体の名称も正式に「五所川原立佞武多」となり、現在では夏の風物詩として多くの観光客を魅了しています。

巨大な山車の迫力

立佞武多の最大の特徴は、その圧倒的な大きさにあります。かつては高さ約12間(約21メートル)もの山車が作られ、遠く12キロ離れた金木の町からも見えたと伝わります。現代の大型立佞武多はさらに進化し、なんと高さ約23メートル、重さ約19トンという巨大さを誇ります。この壮大な山車は「立佞武多の館」内にある「立佞武多製作所」で一年かけて製作され、その題材は歴史上の人物や物語だけでなく、その時代の風潮を反映したものも数多く見られます。

巨大な立佞武多が練り歩く様子は圧巻で、力強いお囃子や「ヤッテマレ!」という威勢の良い掛け声とともに、市街地をゆっくりと進んでいく姿は、見る人すべての心を震わせます。夜には灯りがともされ、幻想的でありながらも勇壮な雰囲気が広がり、観客は一層その迫力に引き込まれます。

祭りの開催と見どころ

五所川原立佞武多は毎年8月4日から8日の5日間にわたり開催されます。祭りでは、毎年新作を含む3台の大型立佞武多が登場し、市内の町内会や高校、企業、愛好団体が制作する大小のねぷたも合わせて15台前後が運行されます。お囃子隊や踊り手たちも参加し、華やかでにぎやかな雰囲気に包まれます。

特に特徴的なのは掛け声です。青森の「ラッセラー」、弘前の「ヤーヤドー」に対し、五所川原では「ヤッテマレ!」が響き渡ります。この掛け声は津軽弁で「やってしまえ」という意味を持ち、観客も一緒に声を上げて盛り上がることで祭りの一体感が高まります。

立佞武多の館

祭りの期間以外でも立佞武多を楽しめる場所が「立佞武多の館」です。2004年に完成したこの施設では、実際に祭りで使用された3基の大型立佞武多が常設展示されています。高さ23メートルもの巨大な山車を間近で見られるほか、4階からスロープを降りながら全体像を眺めることができ、立体的で迫力ある観覧体験が可能です。さらに館内には「立佞武多製作所」が併設され、実際の製作過程を間近に見学することもできます。

歴史と復活の物語

五所川原で巨大ねぷたが記録に登場するのは1907年(明治40年)頃とされています。当時は豪商や地主が競い合い、高さ30メートルを超えるものも出現しました。しかし、大正期以降は電線の普及により小型化を余儀なくされ、さらに戦時中や戦後の大火によって製作資料の多くが失われ、巨大ねぷたは次第に姿を消していきました。

その後、昭和期に合同運行は再開されたものの、巨大ねぷたが復活することはなく、地域の祭りも経済的な停滞や少子高齢化により衰退していきました。しかし、1993年に偶然、豪商の家から巨大ねぷたの設計図が発見されたことで大きな転機を迎えます。有志たちの尽力により、1996年に「武者」と名付けられた巨大立佞武多が約80年ぶりに復元され、復活の狼煙が上がったのです。

その後も新しい作品が毎年製作され、アニメや漫画のキャラクターを題材とした立佞武多が登場するなど、新しい時代に合わせた取り組みも行われてきました。例えば2004年には『ドラゴンボール』の孫悟空、2006年には『桃太郎電鉄』、2007年には『機動戦士ガンダム』をモチーフとした立佞武多が制作され、大きな話題を呼びました。

現代に受け継がれるもつけ魂

五所川原の立佞武多は、市民の「もつけ魂」に支えられてきました。「もつけ」とは津軽弁で「やんちゃ」「向こう見ず」といった意味を持ち、困難にも屈せず挑戦する精神を象徴しています。巨大な立佞武多を再びこの地に甦らせた背景には、まさにこの「もつけ魂」があったといえるでしょう。

観客にとっても、この祭りは単なる観光イベントではなく、地域の誇りと熱気を共有できる体験の場です。力強さと優美さを兼ね備えた立佞武多の姿は、一度見れば心に深く刻まれることでしょう。

まとめ

五所川原立佞武多は、壮大なスケールと市民の情熱が融合した夏祭りであり、青森県を代表する文化財的存在です。巨大な山車の圧倒的な迫力、力強い掛け声とお囃子、幻想的な灯りに包まれる夜の姿は、他では決して味わえない感動をもたらしてくれます。毎年8月4日から8日まで開催されるこの祭りに足を運べば、きっと五所川原の魂と熱気を肌で感じることができるでしょう。

Information

名称
五所川原立佞武多
(ごしょがわら たちねぷた)

津軽

青森県